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THESIS

博士学位論文 
令和3年度 東京藝術大学 大学院美術研究科
博士後期課程学位論文

鑑賞者と作者が共に生み出す体験鑑賞の研究-交歓と共創の実践と<PLAY GROUND>という概念の構築-


2021年12月に東京藝術大学大学院美術研究科 博士審査展2021にて博士論文と作品を発表、博士号を取得いたしました。

論文本文はこちら、博士作品はこちらです。

下記は論文要旨です。

<論文要旨>
本研究の目的は、体験を主軸とした<体験鑑賞>の中で鑑賞者と作者が交歓と共創を行う場<PLAY GROUND>の創作と方法論の構築、それによって鑑賞者参加型作品の芸術鑑賞における新しい体験を創出することである。
本論では、筆者自身が展覧会期間中に経験した、作者と鑑賞者が作品体験を共有する中で起こる「作品が変化する」、「作品が生まれる」などの共創的な相互関係に着目した。そしてその関係性をより深く考察することで、鑑賞者と作者と作品の新たな体験を主軸とした<体験鑑賞>を作ることができるのではないかという考えが本研究の発端である。そしてその共創的な関係と体験を生み出す場を<PLAY GROUND>と称して概念と方法論を構築し、それらをもとに制作した博士修了作品と<PLAY GROUND>という概念を通して、作者、鑑賞者、作品の相互関係を通して生まれる<共創的な体験>の創出と、新たな<体験鑑賞>の提案を行うことを試みる。

第1章では、体験という概念の考察、芸術における鑑賞体験について整理を行う。体験は私達が生きている中で絶え間なく続くものであり、その体験を切り取り内省することで経験となり、その経験が自己を形成していく。また人間の知覚活動である<知覚>は、それを体験することで人に新しい視点を与え、自己形成の助けとなる活動である。そしてそれを行うためには体験者自身の受動と能動の相互関係が重要であるが、鑑賞者参加型作品における芸術体験は、鑑賞者が作品や作者との相互関係から生まれる体験であることから<知覚>を行う上での一つの方法であること、そしてその<知覚>によって共創的な体験 が生まれるのではないかと仮定する。

第2章では、それらの仮定をもとに共創的な経験を生むと考えられる既存の現代美術作品から、何によってどのような共創的な体験や経験を生むのか、またその際の作者の必要性について考察する。12の作品を見ていく中で、作者が共創的な体験において不可欠なものではなかったが、作者がいることでより鑑賞者ごとやその時ごとに異なる相互作用が生まれ、それが作品に作用する部分が見られた。このことから、 作者がいることでより鑑賞者ごとに<共創的な体験>が作られるのではないかと考察した。

第3章では、作者と鑑賞者と作品が相互作用する自作品《人間ノリ巻き》から、<共創的な体験>がどのような構造で作り出されるのかを考察し、<PLAY GROUND>の概念構築における要素の抽出を行う。その中で作者、鑑賞者、作品という3つの要素が不可欠であること、また体験する上で3つの体験の時間軸が存在し、その時間軸の中で3つの要素が相互作用することで共創的な体験を生んでいることを考察し ていく。そして3つの要素と、3つの体験の時間軸を共創的な場である<PLAY GROUND>の構成要素とし た。

第4章では、第3章で導き出した3つの要素と3つの体験の時間軸から<PLAY GROUND>を構築する。3つの要素を<作者>、<鑑賞者>、<オブジェクト>とし、2つの要素の関係性や協働がどのようなことに配慮することで相乗効果が生まれるのか、また3つの要素が合わさった時にどのような共創的な体験が生まれるのかを論じる。そしてそれぞれの組み合わせが3つの体験の時間軸である①鑑賞者が参加する、②鑑賞者と作者が共に体験する、③体験を結実させる、それぞれにどのような働きをしているかを論じ、<PLAY GROUND>を構築していく。

第5章では、第4章で構築した<PLAY GROUND>をもとに制作した博士修了作品《ひと包み》についての作品解説を行い、制作発表の様子と参加した鑑賞者のアンケート回答を紐解きながら、3つの体験の時間軸の中で3つの要素がどのような相互作用を起こしながら共創的な体験を生み出しているのかを検証する。

そして第6章では本論自体をまとめ今後の展開を論じ、終章でまとめる。


​下記のPDFは、博士論文発表時に配布した資料です。
​(PDFビュアーはPCの使用を推奨いたします)

©️Satsuki IMAI

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