ひと包み

制作年:2022年〜
形式:インスタレーション
サイズ:可変
素材:ミクストメディア

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 《ひと包み》は、巨大な風呂敷が並ぶ和装小物屋という作品空間に訪れた鑑賞者が、店の女将である作者 から風呂敷で全身を包まれる参加型の作品だ。 鑑賞者は、和装小物屋を営む女将を装う作者と出会い、「ここでは訪れた人を、話を聞きながら風呂敷で包んでいく場であること」、「希望があればその体験ができること」を聞く。参加を希望した鑑賞者は、空間に並べられた大判の風呂敷の中から好きな柄を2枚選ぶ。そして畳の上に上がり、作者と共に風呂敷を2枚広げて2つの風呂敷を手で結びながら繋げる。そして、結んだことで縦横3m四方のサイズになった風呂敷の上に乗り、包まれたい体勢をとる。体勢は座っても立っても、寝転がっても構わない。
女将である作者は鑑賞者の体勢や体格、会話によって、風呂敷の基本の結び方に則りながら、鑑賞者を包んでいく。ここまでの過程には作者と鑑賞者のコミュニケーションが、風呂敷を介して行われる。そしてその協働と交歓か ら、単なる風呂敷を<ひと包み>という作品に変容させていく。包み終わったら、作者はその場で写真を撮ってアイロンプリント用紙に印刷して鑑賞者に渡す、鑑賞者はそれをハサミで切り暖簾に貼り付け、包み の名前をつける。
体験者が増えるごとに鑑賞者の包み姿が増えていくが、その一つ一つの包みが、鑑賞者と作者によるコミュニケーションでできた唯一無二のアートとなっている。

作品における3つの要素

オブジェクト

本作のオブジェクトは風呂敷だ。大判の風呂敷が並べられた和装小物屋という世界観を作者と作ることで、日常から一旦切り離された空間を作り、鑑賞者自身が安心して体験できる空間を作る。また風呂敷や布は見慣れたものだが、通常の風呂敷サイズを超えたサイズを用いることで、モノを包むモノであった風呂敷が鑑賞者自身を 包むという驚きをもたらす。しかし動作自体は包む、包まれるという身近なものであるため、体験する過程自体 が想像しやすくなっていることで安心感を作る。そして 風呂敷で何かを包む上で不足している「包まれる存在」を鑑賞者、「包む存在」を作者が担うことで補いながら、両者のコミュニケーションから生まれる交歓によって風呂敷が単なるオブジェクトではなく、両者のコミュニケーションと共創された風呂敷包みを合わせた<ひと包み>という作品に変容する。

鑑賞者

本作の鑑賞者は、風呂敷に包まれる存在である。そして作者とともに体験し、単なる風呂敷を<ひと包み>という作品に変える。鑑賞者は作品空間にある風呂敷の柄や、包まれる体勢を選ぶ 選択権を持つ。それによって作者との経験値の差を縮め、作者にとっても唯一無二の新しい体験を生む。また包まれた後には、包まれた体験から鑑賞者自身の包みの名前をつけるという内省とアウトプットの機会を持ち、その中で得る内省と客観視する機会が、体験を経験へと移行させるきっかけを作る。

作者

本作の作者は、和装小物屋の女将である。作者は女将となってオブ ジェクトの風呂敷と共に作品空間の世界観を作り、体験の調整を行 う。鑑賞者と共に体験することで共同しながら風呂敷というオブジェ クトを<ひと包み>という作品へと変える。鑑賞者の風呂敷の選択 や、体型や体勢によって作者が体験の全てをコントロールすることは できない。鑑賞者に対して風呂敷の柄や体勢の選択権を譲渡し、自身も挑戦者として体験に臨む。

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<展示歴>
・2021年12月…「東京藝術大学大学院美術研究科 博士審査展2021」(東京藝術大学大学美術館・陳列館/東京、日本)