top of page

CV

210214-207.jpg

photo:Tatsuhiko Nakagawa

今井さつき

 私はコミュニケーション、参加型作品という形態と技法を用いて<PLAY GROUND>、<共創>、<交歓>をテーマに鑑賞者と共創する空間の制作を行っている。
 自身の制作の背景には、自身が学んだビデオゲームが大きく関わっている。私は幼少期よりビデオゲームに親しみ、自身の体験からゲームや遊びが自身を成長させたり、人との関係をつなぐ存在であると考え、ビデオゲームの制作者になることを夢見ていた。ゲーム制作者を目指し専門の大学で学んでいる時に現代美術に出会い、「自分の住む場所や役割とは少し離れたところで、思考したり体験することができる」というゲームとの共通点と親和性をアートに感じ、またそれを公共の場で行うことに興味を持ち始めた。そして自身が学んだ「プレイヤーが主人公になることができる」、「プレイヤーが参加することで未来を変えていけると感じる体験を作る」「人と人の関係をつなぐ」というゲームの要素を取り入れ、作品制作を始めた。
 自作品である「Raybox」は、鑑賞者の持ち物から万華鏡を作る装置を作ることで、鑑賞者自身の日常を素材として彼らにしか作ることのできないビジョンの創造を目指した。「はじまりのだいち」では、鑑賞者が作った花が、作品内の無機質な素材でできた岩の洞窟の景色を少しずつ変える空間を作ることで、人々の関与によって景色を変えていくことができる可能性の提示を試みた。「人間ノリ巻き」では、鑑賞者自身が巨大な海苔巻きの具材となり、巻かれながら作者と協働で自身の海苔巻き作ることで、身体的な新感覚を伴った創作活動を目指した。どの作品も、鑑賞者自身が作品の主人公となって、それを作者と共に遊ぶように作り上げていくというスタイルで制作・発表を行なっている。
 それは私が作品という媒体を通して鑑賞者という他者と繋がる<遊戯場>を作り、彼らを招待しているようなものである。私は鑑賞者に対して「あなたと友達になりたい」という気持ちを作品に込め、自身も緊張しながら鑑賞者を迎え入れている。鑑賞者の関与によって、全てが予定調和にはならないことで生まれる、常に異なる鑑賞者とのコミュニケーションが、作者である私自身も新たな自己へと変容していく。そしてその交歓を通して、私が制作した装置や無機質な洞窟や海苔巻きという<オブジェクト>が、唯一無二の万華鏡というビジョンや花の咲く景色や人間ノリ巻きなどの<作品>へと昇華されていく。
 アートを介して行うこの試みは、分断や偏見が一層強まる現代に「自分以外の他者との相互関係によって、新しい体験や新しい自身、新しい思考、新しい世界を創造することができる」ということを、作者も鑑賞者もその身を以て実感する、正解のない遊戯場だと考えている。そしてそれは人間の豊かさ、感受性、個性や生きていくことの意味を、思考し、志向し、試行することができるアートだからこそ試みることができるとも考えている。(詳しくは論文へ)

経歴

2022年 東京藝術大学大学院 美術研究科 美術専攻 先端芸術表現領域 博士後期課程修了
2017年 東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 修了
2013年 愛知県立芸術大学大学院 美術研究科 デザイン専攻 修了
2011年 東京工芸大学 美術学部 アニメーション学科 ゲームコース 卒業

展示歴

2022年「IN : ACT BẾN NGỌC THỤỴ BY NHÀ SÀN COLLECTIVE」(WH22 Nha San Queer House/ カッセル、ドイツ)
2022年「Just Rolllllll」(フリデリチアヌム美術館 Gudkitchen(バックヤード)/カッセル、ドイツ)
2021年「東京藝術大学大学院美術研究科 博士最終審査展」(東京藝術大学大学美術館・陳列館ほか/東京)
2020年「INSIDE DIVERSITY(上野駅Breakギャラリー/東京)

2020年「作ることは祈ること」(OIL by 美術手帖/東京)
2020年「The Struggle for Tomorrow(3331 ART FAIR/東京)
2019年「Precious situation(デジタルハリウッド大学/東京)
2018年「アトラス展(東京藝術大学 大学美術館/茨城)
2018年「TURNフェス4(東京都美術館/東京)
2018年「こども こらぼ らぼ(水戸芸術館/茨城)
2018年「無意味、のようなもの(はじまりの美術館/福島) 
2017年「TURNフェス3(東京都美術館/東京) 
2017年「フェルトシュテルケ・インターナショナル-東アジア文化都市2017- パブリック・プレゼンテーション
(京都芸術センター/京都)

2017年 「TURNフェス2(東京都美術館/東京)
2017年 「東京藝術大学 卒業・修了制作展 (東京都美術館/東京藝術大学/東京)
2015年「TURNフェス(東京都美術館/東京)
2015年  個展「이랏샤이마세〜いらっしゃいませ展〜(gallery bonun/ソウル)
2015年   東京藝術大学×エコール・デ・ボザール国際共同プロジェク「私と自然 (越後妻有トリエンナーレ/新潟)
2014年 「人間ノリ巻きゲリラパフォーマンス (ポンピドゥーセンター前広場/パリ)
2013年「愛知県立芸術大学 卒業・修了制作展(愛知県芸術文化センター/名古屋)
2013年「TETSUSON2013(Bank ART studio NYK/横浜)

©️Satsuki IMAI

bottom of page